動の分野をひろげ、各地方に支部を組織した(ロカフの組織は、ラップとどの点でも対立したものではない。ラップに属する作家が、または全露農民作家協会《ヴオクプ》に所属する作家が、同時にロカフに加入している)。
 一九三一年に入って、ロカフは「モスクワ・ロカフ」「レンバルトロカフ(レーニングラード・バルチック・ロカフ)」の他「タトロカフ(タタール共和国のロカフ)」「セヴカウロカフ(北コーカサス・ロカフ)」「スレダズ・ロカフ(中央アジア・ロカフ)」その他まで拡張した。
「ロカフ」が組織されて一年近く経った。
 今のところロカフに属する作家たちの書く作品の題材は、主として国内戦時代、歴史的な過去の事件からとられている。今日のわれわれの赤軍について、その社会主義建設の役割についてジックリ書かれた作品というのは極く少い。今日の、平和時代の赤軍はまだ充分紹介されないのである。
 モスロカフ(モスクワ・ロカフ)は、それより前、夏期の野営《ラーゲリ》を組織し、そこでロカフの作家たちが軍事知識の吸収と文学活動をやるようにした。
 レンバルトロカフも五月に入るとロカフ主催の軍事講習会を催した。十四回の講義で、「軍事問題におけるマルクス・レーニン主義の根本原理」「軍事の出版問題について」の説明をやる。六十二名の作家が動員された。
 この講習の期間に作家聴講生は、二つの壁新聞を発行し、ほかに有益な軍事遊戯を思いついた。軍時に、ソヴェト軍隊と、交戦中の敵国住民大衆にアッピールするものと仮定したパンフレット、それにはクラブ用の小脚本、レヴュー台本、プラカート用の詩、スローガンなどを盛りこんだパンフレットの発行である。
 軍事状態の中にあって各自の文学的政治的軍事的知識を活用し、敏捷に明快に文学活動をやる稽古だから、ゆっくり構えていては何にもならない。規則をきめると、或る作家たちは一枚の封筒を渡された。中に、めいめいが書くべき主題・形式、長さを命令した紙が入っている。翌朝十時までに必要に応じた詩・論文・スローガン・ビラなどを芸術的作品にまとめて出さなければならないというわけである。
 規定通り、作品は集った。これらの作品が研究された。討論会が持たれた。どの作品も仮定された軍事行動の階級的本質については正しく認識していた。
 だが、その基礎的な正しさにも拘らず、少なからず部分的な誤りや知識の不完全さを示
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