会的文学的発展とのつながりで、農民・小市民の文化文学の実質が、どのように小市民自身の解放に役立つものとして成長するかということに大きい関心を払われているのである。

          七

 現代文学は、もうしなびてしまった私小説のから[#「から」に傍点]から、どのように新しい成長をとげるかという共通のもがきをもっている。中間小説の作家が、その作品を希望しているような社会的な内容をもつ小説としてゆくためには、不自然なほど過重に性の興味をもりこんだ世相反映の創作方法とはちがった現実観察の角度と創作方法をもたなければならない。それは、どうして発見されるだろうか。丹羽文雄が主体性ぬきの現実反映のリアリズムからぬけ出て、少くとも歴史の前進する角度をふくんだドキュメンタリーな作品へ進もうとして、一九四九年にはその素材の選択そのものにおいて、まず歴史的なふるいわけが必要であることを発見したと思われる。「塩花」から「牛乳と馬」にすすんでいる豊島与志雄の前進は、明日へどうはこばれてゆくであろうか。多くの人々の上に、その作品と他の面での市民的意思表示との間の発展的な矛盾があらわれている。或いはあれとこ
前へ 次へ
全53ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング