と、していることは、こんにちの知識人の常識の底をわっている。日本の人民は国内国外のできごとについて、事実を明白に知る自由を妨げられている。そのことへの抗議としてならば、わけもわかるが、あいまいであるというのが評論家自身かいている中共の確定的勝利[#「確定的勝利」に傍点]そのことに対して云われているのは、そこにひとにはわからない皮肉がこめられている次第でもあろうか。
 世界には、きょう、少く見つもって六億の男女が平和を擁護し第三次の戦争を挑発するファシズムに反対して民族の生活と文化の自立を確保しようとしている。ファシズムによる第二次大戦は、破壊の残虐と痛苦で人類の心臓を出血させた。そして、きょうになってみれば、生命を奪われ生活を破壊されたものは、どこの国においても人民の老若男女、子供であったことが、いよいよ明瞭である。
 日本のなかでの帝国主義のもとで、今日の権勢が暴政であることを感じつつあるのは、労働者・勤人や学生ばかりではない。中小商工業者の破滅とラジオ、新聞をふくむ文化、学問への抑圧はどれも一つ同じ原因から発している。河合栄治郎の公判記録が、『自由に死す』というパンフレットになって
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