迄、私は、城の扉も閉めさせまい」
二十
母の悲歎は、強くスーラーブの心を痛めた。彼にとってそれが苦しいのは、もう自分の決心は到底動かせないもので、たとい母がそのために泣き死んでも、止めることは出来ないと解っているからであった。彼の親切な慰めもこれが最後かという悲しさのために、却って、ターミナにとって堪え難いものらしく見えた。スーラーブは、愛を籠め必要な説明と希望とを与えた後、出立迄、出来るだけそのことには触れない方針をとった。内房の女達は、やがて黙って、折々不安の吐息を洩し、眼頭に涙をためながら守袋を縫ったり、鞍布の刺繍にとりかかり始めた。是等の沈み勝な湿っぽい情景に拘らず、時期が迫って来るにつれ、スーラーブの全身には、益々精力が充ち満ち、心は、満を持した弓のように張り切った。シャラフシャーやアフラシャブの宮廷から先発して来たフーマン等と進路のことにつき、または戦略に関し、長時間に亙って協議した後、スーラーブは、新鮮な息を吸おうとして、広間の歩廊に出る。が、爽かな空気を呼吸するどころか、彼は、丁度下の出立の仕度で大混雑の広場から舞上る、むせっぽい砂塵を浴びた。
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