しく、丁寧に、
「お若い、雄々しい君様の御将来には、大国の王座が約束されているようなものでございます」
傍に、髭を撫で、注意深く話を聞いていたシャラフシャーが、じろりと、鋭く商人を視た。
「卿は、宝石だけを売っておればよろしい」
そしてスーラーブに向い、ゆっくり、一言ずつ切って、
「我君、どの玉をお買いなされますか?」
スーラーブは通一遍の興味で、隋円形の紫水晶と、六七|顆《つぶ》の円長石とを選んだ。
「何と云ったか、その種々に光る石は、美しいことも美しいが少し高価すぎる。考えて置くから、まあ悠くり滞留するがよかろう」
スーラーブは、立ったまま、代として渡す羊について一言二言つけ加え、広間を去った。
十六
これ迄になく、スーラーブは、半月余も宝石売を城に止めて置いた。その間彼は、朝の遠乗をすますと買おうとする宝石の撰択をきっかけにしては、一日の幾時間かを、宝石売とシャラフシャーと三人で過した。そして、好い機会があると逃さず、イランのこと、ルスタムのこと、或はその他の国々の様子を訊く。
彼が、宝石より何より、それ等の話を聴きたいばかりに、宝石売を止めて置く
前へ
次へ
全143ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング