石売は、膝を叩いて、独りでハッハッハッと大笑した。
「城の広場で、えらい騒ぎが致しますから、私も珍らしいことなら見落すまいと駆けつけますと、王自身が、世にも奇妙な乗物に乗っておられます」
カイ・カーウスは、玉座の四隅に矛先に肉塊を貫いたその途方もなく長い槍を突立て、もう少しで肉に届く、然し、永久に二尺だけ足りないという鎖で四羽の鷹を、一羽ずつその下に繋いだ。
「お小姓が、酒と果物の皿を捧げますと、カーウスは、手をあげて合図をされました。いや、あの時の光景は、観た者でなければ想いもつきますまい。何しろ四方は山のようなんだからでございます。内房の女達まで覗いている。鷹匠は声を嗄して、四羽の鷹を励ましております。王は、得意な裡にも恐ろしいと見え、しっかり、頸の長い酒の瓶を握りしめておられる。気勇立つ鷹を押えていた男が、呼吸を計って手を放すと、昇った、昇った。王は、七日七夜の思惑通り、ふわり、ふわりと、揺れながら、玉座ごと地面の上から舞い立たれました」
十五
「若しそれぎり雲の中に消えてしまえたら、イランの王の腰骨も、あれほど痛い目には会わなんだでございましょうに……」
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