ラーブの傍についている筈であったギーウが、少数の卒を従えて、此方に向って来かかっていた。ギーウの頭は、深い哀悼を示すように胸に垂れていた。手にはルスタム自身がぬがせてやったスーラーブの鉄の兜が仰向けに捧持たれている。ルスタムは、手綱にかけた手をとめ、釘づけになったように眼を凝した。静かな、短い行列は、輝く主のない兜を守って、実にひっそりと、無限の空虚を運んで来るように感じた。
ルスタムの、老いた顔は、急に引釣った。膝頭がまるで力を失った。
彼は蹌踉《よろよろ》と! 馬の脇に靠れかかった。
彼は、頻りに片手で額の汗を押し拭うようにしながら呟いた。
「よし、よし。わかった。――が、この父のルスタムは、讐をどう討てばよいのか……」
底本:「宮本百合子全集 第二巻」新日本出版社
1979(昭和54)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第二巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「小樽新聞」
1924(大正13)年1月14日〜3月9日号
※底本では、二度目に現れる「内房」についていたルビ「
前へ
次へ
全143ページ中142ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング