ころのない優しい感情ののこりと、説明の必要を知る実際的な意識とが、ひくひくする小虫のように、彼の心で動いた。彼の色の変った唇に、微笑の引つれが、見わけのつかない表情が浮んだ。彼は、ゆるゆる囁いた。
「スーラーブ……ターミナ、サアンガンのターミナは母だ」
 俄に、ぱっと生命の最後の滴りが輝くように、スーラーブは、熱烈に云いつづけた。
「ああ、今死ぬものか? 死んでなるものか。行って云え、早く云え! ルスタムの息子が、父をたずねて来たのだと」
 ルスタムの躯は木の葉のように顫え出した。彼の顔は、死んで行くスーラーブの顔より蒼くなった。彼は、呻き、両手を天に投あげると、涙を流してスーラーブの頭を抱きかかえた。何と云おうにも言葉が出なかった。彼は、自分の運が、想像出来る最も惨虐な一幕の上を、静かに自若と通りすぎるのを感じた。これはあり得ないことだ。信じ難い凶悪な偶然だ。而も事実で、自分の殺した息子の頭を抱えて泣く憐れな愚な父は、この父、ルスタム以外の何者でもない。然し、何のために自分の息子は、こんな危険極まる機会を作って自分に会おうとしたのか。あの突拍子もなく思った虫の知らせに、何故もう少し信
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