、現代史の、かくれた蝶つがいがひそんでいる。民衆の意志というその蝶つがいの当然な動きによって、デューイとギャラップその他の側に扉がしまって、トルーマンへのドアが開かれたのだった。
トルーマンにしろ、デューイにしろ、大統領立候補のはじめから、互に根本的[#「根本的」に傍点]に対立する政策をもって運動を開始したのでなかったことは、われわれにも明瞭だった。ルーズヴェルトの時代、同じ民主党に属していても保守的な南部諸州の見解をおもんばかって副大統領とされていたトルーマンはもとより共和党と同じブルジョア政党の立場だから、独自の政綱というものはなかった。ルーズヴェルト未亡人が、トルーマンを支持しないという声明を出して、それが日本の新聞にも出るころから、デューイの元気そうな笑顔が世界の隅々まで流れひろがった。だけれども、ほんとに平和と民族の自立を渇望している世界の人々のこころは、不安を感じていた。アメリカの正直な人々が自身の名誉ある民主主義の伝統を守るどのような能力を示すだろうかということに絶大の関心をもった。もしアメリカがその巨大な存在において民主性を喪ったなら、その腐敗は本質的にアメリカの社
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