がせたくないという考えをもっている若い男が今日もなお多勢います。そのために、自分の薄給では結婚もできずにいる不幸な青年たち、今日の多難な社会で特別な経済的根拠も持たない若い男と女とが、ともに助け合って生きてゆく結合の形として、家庭というものをいまだに長火鉢中心の古い型にあてはめて不自由に、消極的に考えている不幸な男のひとたちでも、以上のような意味ですすめられる女の仕事を、一概にけなすことは不可能でありましょう。
抽象論としては一応誰にも納得されるだけに、私たちはこの女と仕事の問題を、注意ぶかくしらべる必要があるのだと思います。なぜなら現代の女の生活は、実に複雑な経済的文化的な諸事情に影響されているのですから。――
まず、一人の女が生きてゆく上で心のよりどころとなる仕事というからには、それが、ただ好きだというだけでは不十分です。その仕事によって、ある程度の生活保証もできるだけの仕事でなければならない。一つの技術の上達に対する確信に加えて、それによって社会的にも一人立ちしてやって行けるという自信、安心。生活の実際ではこの点が将に重大な意味をもっている。これは否めない事実です。
たと
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