までのものに表われて居るのは必して考え深い悲しみではありません。
考えるねうちのあるだけの悲しみではありません。
たった普通の十三四または十五六の娘が必して尊い悲し味を味う事はしないものです。
若い子供達が悲し味を多く知ると云う事は私に云わせればいかにもいたましい事で又どうにかしてそうであらせたくないんです。
私は少女小説と云うものについて随分いろいろの事を考えて居ますけれ共又私の性質からそれに没頭してそのためにつくすと云う事は出来ません。
世の中にありあまるほどいらっしゃる少女小説の作者に申します。
失礼な申し分かも知れませんが若い娘共に只悲し味と云うものばかりほか注ぎ込んで下さらないのなら、どうぞ筆をお持ちになることをやめて下さいまし。
若しつくそうと思って居て下さる方々へはどうぞ価値のある力強い、美術的な又芸術的な、一つの或る馬鹿に出来ないものである少女小説をお出し下さい。
私は今の少女小説は、悲しみの毒虫と云います。
少しでも改革され、少しでも立派なものになるまで私はあくまで悲しみの毒虫と云いましょう。
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
前へ
次へ
全8ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング