見つくろい
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年六月〕
−−
たとえば半襟のようなものでも、みつくろって買って下さいね、とたのまれると、私たちは相当閉口する。自分が見てあのひとにはこれと思って選んだ色にしろ、果してその色を本人が好きと思うかどうかは不安であるし、見つくろって、と買物などをひとにたのむことは、相手を立てているようでその実は困りもののときが多い。
菓子屋などへ電話をかけて、見つくろっていかほど、と云ったりしているのをきくと、やはり嬉しい気がしない。菓子屋の職人で、すこしは美味い菓子をつくっている自信のあるのがそんな注文をうけたりしたら、やっぱりまかせられたうれしさよりも、そういう大ざっぱな味いかたを幾らか腹立たしく感じそうに思われるけれど、どうかしら。
いろいろ日本の生活の感情の細かいところにふれて考えてゆくと、ひとに判断の責任をゆだねたこの見つくろいが、案外様々のところに行われているのではないだろうかと思われる。媒酌ということが日本の結婚のしきたりでは単に紹介
次へ
全3ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング