いの間に、その界隈の様子は随分変って来たのだが、特別この一、二年に新しい屋敷がどんどん出来た。坪二百五十円であるとか、それではこの辺一帯の地価に対して高すぎる、だから売れない。そんな噂があって、区画整理した分譲地もそこここまばらに住む人が出来ただけで数年が経過していた。すると、一昨年あたりから、地価の方はどうなったのか知らないが、今まで草蓬々としていた四角や長方形やらの空地の上に、いろいろな形の家が、いずれもとりいそいだ風にして建てられて行った。分譲地の九分通りに、そうして家が出来た。
もとその一画は某という株屋がもっていた林や原っぱであった。
子供の自分、××さんの原っぱの奥で、運動会があるというので見に行った覚えがある。日向の芝生に赤い小旗がヒラヒラしていた。あそこへ××さんの唖の息子も来ている。そう云って集っていた近所の人々は目ひき袖ひきした。
そこの家には三代唖のひとがいたとか、三人の男の子が唖だとか、それに何か金銭につながった因縁話が絡んで、子供の心を気味わるく思わせる真偽明らかでない話が、その時分きかされていたのであった。
今のこっているのは、原っぱの奥の崖下にあっ
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