表しているのはイギリスの学者であった。
わたしはそのニュースに目をこらした。そしてだんだん体のこわばって行く感じだった。夫婦の間に赤ちゃんを遊ばせてあんなに楽しそうにほほ笑んでいた王女エリザベスは、このニュースが世界に流布されたことを知っているだろうか。あどけなくおさないチャールズの命と、そのすこやかな成長を願わずにいないだろう母の思いと、すべての人類を醜い不具にして死滅させる兵器の発見という宣伝との間には、ほとんど信じられないほどの残酷さがある。若い親たちと赤ン坊とのあの家族写真には見えない空のどこかに、その残酷さが、禿鷹のように舞っているのだろうか。
八月一日の『ニュース・ウィーク』には、はからずも王女エリザベスの二つの表情がのせられている。その一つは、涼しい夏別荘の芝生で無邪気に家族が団欒しているあの家族写真。もう一枚は閲兵式場の王女エリザベスの姿である。こちらの方は『ニュース・ウィーク』の投書欄にのっている。テキサスのトム・エフ・マンデン(姓名のあとに二世とつけているから、マーシャルというテキサスのその市でのマンデン家は、社会的に何かの意味をもっているのだろう)という人が七
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