。現在では、すべての封建的な意図が、その表現はかならず日本の民主化と復興のため、といういいまわしをもちはじめた。
 最近あらわれた元看守のファシストである暗殺者さえ、属する団体は民主化同盟という名をもっている。もういっそう手のこんでいる政治的な場面では、封建的というどんな表現さえもつかわずに、日本の封建性が旧勢力の利益のために最大限につかわれている。日本の独占資本家たちが、より強大な国際資本におんぶして大衆生活は二の次として生きのびる決心をしてから、それらの人々の近代化[#「近代化」に傍点]は急テンポにすすんだ。日本の港からあがって来た資本主義の独占的な本質にくっついて動くに必要な程度にまでいち早く自身の独占資本性を推進させた。この過程に、日本につよくのこっている封建性が十分利用されている。政治は政治家がやるものだというふるい考えかた、文化人は直接政治にはふれないという消極的な態度。それらは日本の社会の歴史のなかではどれも一種の封建性であるといえる。
 利にさとい人々は、日本の文化性にあるこの不幸な沈黙とうけみの習慣をとらえて、この国会の会期中、どっさりの反民主的な法案を上程している。
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