る講談社文化がはびこっていることはまちがっている。文化は平衡をもたなければならない。おくれた低い文化はたかまり、狭い高い文化はもっと一般化されなければならないというのが谷川氏の論旨であった。ところが、当時の情報局文化統制は、講談社、主婦之友を極端な軍国主義に動員することで好戦意識を宣伝していたから、谷川氏の平衡論はその現実のなかで、日本のより高い理性をもつ文化能力を抹殺する理論づけになった。戦争について意見をもつ文化は、少数者の高すぎる文化として圧殺された。
日本が降伏して、日本の民主化がいわれはじめた。新しい日本の社会生活へ生れかわろうとする人民の真実な希望がうかがわれるらしく見えた。しかし三年たったいま、わたしたちのぐるりにある光景はなんだろう。三年たつうちに、民主化されようとする波をかいくぐって生きのびて来た旧い権力者たちは、日本の封建性というものをさかて[#「さかて」に傍点]にとって、日本の民主化を威脅しはじめている。一九四六年の日本でこそ、封建的なものは、民主的なものに反する性質をもっていることが一般の感情に明瞭にうけとられていたし、対立する本質の言葉としてつかわれてもいた
前へ
次へ
全20ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング