の生活を考えると、文化というものは、つくづくわたしたちの全生活をひっくるめての問題になっていると思う。日本の民衆として運命そのものを語る題目となって来ている。日本の文化は日本のわたしたちをさえ戸惑わせるような伝統の特殊性から解放されなければならない。世界の平和の確保のうちにめいめいの家庭の平和の保障が存在することを実感する主婦の感情こそ、日本の未来を明るく支える文化の感覚である。権力を失うまいとするものが、どんなに卑しく膝をかがめて港々に出ばろうとも、着実真摯な男女市民の人生は、個人と民族の基本的人権のありどころを見失わないで、粘りづよく現実に、自主的で民主的な運命の展開のためにたたかわれてゆかなければならないと思う。その人生の美しさに感動しうる精神こそ文化性というにふさわしいとおもう。[#地付き]〔一九四八年九月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「女性改造」
1948(昭和23)年9月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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