気むずかしやの見物
――女形――蛇つかいのお絹・小野小町――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)宛然《さながら》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九二三年七月〕
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伝統的な女形と云うものの型に嵌って終始している間、彼等は何と云う手に入った風で楽々と演《し》こなしていることだろう。きっちりと三絃にのり、きまりどころで引締め、のびのびと約束の順を追うて、宛然《さながら》自ら愉んでいるとさえ見える。
旧劇では、女形がちっとも不自然でない。男が女になっていると云う第一の不自然さが見物に直覚されない程、今日の私共の感情から見ると、旧劇の筋そのものが不自然に作られているのである。
けれども、例え取材は古くても、性格、気分等のインタープレテーションに、或る程度まで近代的な解剖と敏感さを必要とする新作の劇で、彼等は何処まで女になり切れるだろう。
舞台上の人物として柄の大きいこと、地が男である為、扮装にも挙止にも殊に女性の特徴を強調しつつ、何処かに底力のある強さ、実際にあてはめて見ると、純粋の女でもなし
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