以前のものであり、読者の大部分に直ぐ誰とうなずけるような歴史的な人物などを配置して、しかもそれが、では、どこまで報告的確実さがあるかというと、その点では小説の方へずり込んでぼやけるような安心を与えない効果をもっている。「作家クラブ」「清党される日」「病室の独裁者」とかいう小題が付せられている章も、ゲ・ペ・ウに呼びつけられた時の描写や何かと混っているのである。
 編輯後記には、ソ連に数年滞在した若き作家と紹介されている。筆の立つ人であるらしく、数年前或る役所からこの人の名で独特なパンフレットが出ていたような覚えがある。いろいろを考えると、「作家」という名詞の包括力の大さに、慨歎せざるを得ないわけである。

        「新日本文化の会」の結成

 噂のとおり、文芸懇話会が、最後に川端康成氏と尾崎士郎氏とに授賞して、十六日解散した。懇話会の主宰者・元警保局長松本学氏談として、帝国芸術院が出来上って、政府もわれわれの考えるような文化への態度を明らかにして来たから、芸術院に具体的活動をさせるためにも懇話会は解散し、自分は新しく出来る文化中央連盟と林房雄君等の努力によって出来上る「新日本文化
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