御出になったと見えてもうひやっこくなってるんですもの」
「マア、どうしましょう、私が居ねむりをしたばっかりに、ほんとうに相すまないことになってしまって」
「ほんとにネー、どうしましょう。とにかくきいて見ましょう、御きのどくですけれ共ほかのかたの御部屋を、まさか家のそとにはいらっしゃらないでしょうからネー」
「ほんとにそうだといいんですけれ共ネー」
「貴方紫の君さまのところへ、私は大奥様と殿様のところへ行って来ますから、どうぞ」
 二人の女は女特有の重い音を立てて右と左に分れて走って行った。
「一寸、どなたかお目ざめでございますか、光君のとこの紅でございます」
 うわずった声で大きくよんだので年とった女が、
「オヤ、マアどうなすったんでございます、光君がどうか……?」
「あの若しやここに御邪魔致しては居りませんか、御見えにならないんでございますが――」
「アラ、一寸御待ち下さって――『一寸一寸さっきここの前で何だか悲しいうたをうたっていらっしゃったのは光君だったでしょう』やっぱり。もうずっと前三時ほど前にここの前で細い御声で何か歌を御うたいでございましたが、やがて高い御声で御笑いなさりな
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