た口調で落ついて云ったので殿は少しおどろきながら、
「行きたいのなら御いで……だけれ共私にこれ以上かなしい目にはあわせないで御呉れ」
 紅は殿の今いった言葉がその意味以上にようわかった。
「大丈夫でございます」
 シャンとした気丈な様子をしてそのあとにつづいて池に降りた。
 向う岸にならんで居る木の小さく見えるほどの大きさ、まわりの草は此の頃の時候に思い思いの花を開いてみどり色にすんだ水と木々のみどり、うすき、うす紅とまじって桔梗の紫、女郎花の黄、撫子はこの池の底の人をしのばすようにうす紅にほんのりと、夜露にしっとりとぬれてうつむいて居る。
 かおの白い衣の美くしい人達はその中に足元をかくして立った。池の面は人々のかなしみも何にも知らぬがおにしずかにみちて居る。すくい上げられた紫の君の着物はその裾からつゆをしたたらしながらわきの柳の枝にかけられて居る。人達は一まわりズーッと見まわしてから目をつぶった、□□□[#「□□□」に「(三字不明)」の注記]の口からはかすかな祈りのこえがもれて居る。紅は□[#「□」に「(一字不明)」の注記]にぴったりとすわって、深く人よりも大きなことを祈るように目
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