と信じて居る。
 こんな妹を私に下すった両親にも感謝する。
 私は、立派な妹を得た姉の誇りで輝いて居る。
 会う人毎に、
「そりゃあ、大きな可愛い児でございますよ。
と云って、来た人には抱いて見せ、行った先では身振りまでして、話して聞かせた。
 たまらなく可愛いので、やたらに抱くので、もう私と看護婦の手を覚えて、どんなに泣いて居ても、二人の内が抱くと、きっと泣き止む。
 成丈、脊髄を曲げない様に、左右の手を同じ様に発育させる様に注意して、ゆったりと胸に抱えあげて、形の好い鼻からさし引きする安らかな呼吸を聞いて居ると、私の心は、類もない希望と、安心にときめいて来る。
 長年の勉強と努力で、漸う出来た私の智慧の庫(それは、額の両端が、際立って発達して、手でさわると二つの分れ目にあたる中央部はズーッと凹んで居る)を、この児は、生れながらにして至極小さくはあるが持って居る。勝れた利口に育ってくれる事は確かである。
 私は、どうしても、好い自慢の出来る児に仕立てあげなければ……。
 あんまり可愛がりすぎて刺戟を多すぎさせますまい。
 早くから連れて外出はしますまい。
 危険が一瞬間に起った時さけ
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