いる彼等にとってこそこわい力なのです。
渡政のおっかさんは最前列に腰かけて、時々愉快そうに笑ったり、キッと注意をかたむけたりして一つもきき洩すまいとしています。私は、演説の間思わず本当にそうだ! と手をたたきたくなったので困りました。どんな工面をしても働く婦人が公判をききにゆかないという法はないと思いました。だって、そうではありませんか。この頃わたしたちが本当にききたいと思うような講演会で中止にならないことはありません。公判で堂々と話される演説には、どんなにはっきり云われても、中止! はないのです。これだけでも、わたしらの教わることは話のほかです。
私は失業中で切ない暮しですが、傍聴にはこれから出来るだけ度々来ようと決心しました。私を失業させたのはこのブルジョア社会です。私はそれとどんなに闘うかというやりかたを少しでも、闘士たちの闘争ぶりから学ぼうと決心したのです。あの人々は命がけで、私達が毎日闘っているものと闘っていてくれるのです。
生意気のようですが、みなさんもどしどし傍聴に出かけたらいいと思います。もうじき四・一六の記念日ですから、私達はかたまって大勢で押しかけたいと思って
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