格子縞の毛布
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)縮毛《ちぢれげ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大|羊歯《しだ》のような

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いほ[#「いほ」に傍点]は、女中をやめた。
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 縮毛《ちぢれげ》のいほ[#「いほ」に傍点]は、女中をやめた。
 毎日風呂にゆき、ひびがすっかりなおると、彼女は銘仙の着物を着て、自分のように他処でまだ女中をしている国の友達や、屑屋をしている親戚を訪問して歩いた。彼女の赤い頬ぺたや、黒くてちぢれた髪に、青々した縞の銘仙着物はぱっとよく似合った。手袋も、襟巻も、そう大して古くはないのをつけ、誰もが急しそうにしている暮に、
「あなた御用があるでしょう? 私暇だから、お正月にまた来るわ。ね、そして写真一緒にとりましょうよ」
というのは何とお嬢さんのような気がしたことだったろう!
 誰の目にも、いほ[#「いほ」に傍点]が女中はもう根っきり、はっきりやめたのが明になった。大概あきも来たであろう。いほ[#「いほ」に傍点]は、東京に出てから五年
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