街
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)老耄《ろうもう》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)窓|硝子《ガラス》がガタガタ鳴った。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)失礼です《イズウィニーチェ》[#「失礼です」のルビ]が、
−−
一
一九一七年に、世界は一つの新しい伝説を得た。「ロシア革命」。当時、そのロシアに住んでいた者は、物心づいた子供から、老耄《ろうもう》の一つ手前に達した年寄りまで、それぞれ一生の逸話《アネクドート》を拾った。逸話は、いかにもこの国風な復活祭の卵のように色つきで、或る者のは白、或るもののは緑、或る者のは真赤だ。
レオニード・グレゴリウィッチ・ジェルテルスキーはやっと商業学校を出たばかりの青年であった。彼の父親は小さい町の工業家で、革命の時、理由あってか、多くの間違いのうちの一つの間違いによってか殺されて、河の氷の下へ突込まれた。ジェルテルスキーは、それから、母親を五日鶏の箱へ詰めた経験、真直自分の額に向けられた拳銃の筒口を張り飛したので、銃玉《た
次へ
全41ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング