すって。級の心持としてしたいと思うんですが、どんなことを云ったらいいかしら」
「分ってるじゃないの。そんな送別会なんてつまらないと思っていますって、はっきり云ってよ」
三輪が薄く紅をつけている唇を尖らして云った。
「全くだわ、形式じゃないの、ただうわべだけの。各級から幹事だけなんて、――そんなのあるもんか」
がやがやしはじめた中で、宏子が自分の手を叩いて注意をあつめた。視線があつまると少しはにかんだ顔付になりながら、宏子は熱心に、
「級で云ってもらうことをきめておきましょうよ」と云った。「私は、飯田さんに是非このことだけ云ってほしいんです。それは、三田先生が、教科書以外のことについて話してくれたのが、どんなに本質的に私たちの学問になっているかっていうこと。そして、三田先生がこれからどこで教えても、学生は活きた知識を求めていることを決して忘れないでくれるように。学生は先生が考えているより判断力をもっているから、リンゼイの説だって私たちは鵜呑みにしてはいない。だから安心してくれるように、って。だから、学生はそういうことを理由に先生がやめさせられるとすれば、それには心から反対ですって、ど
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