れば、きっと何とかなさるわ」
「今日の放課後でも、三田先生のところへ行って見たらいいわ、そうすりゃ少し様子がわかるから」
級の意志を代表するのだからと云って、この有志訪問に幹事の飯田も参加させられた。
予科では、三田の出る筈だった時間に、カキがやって来て、三田先生は一身上の都合で地方へ転任するのだから、いろんな噂を信じないようにと云って、自習を暫く監督して行った。この彌縫《びほう》策は翌日になって予科全体をすっかり怒らせる結果になった。カキが公然と予科を騙したこと、子供扱いにしたことが予科のみんなをおこらせた。
三年はその日は食堂などでも一般に妙に落付いていて、よそよそしい態度を示した。
宏子は三田の家を訪問する仲間には入らなかった。それは相談の上のことであった。杉も残る組にまわった。はる子はグループをそういう風に分けた。前の晩に打合わせはされていた。
門限ぎりぎりに、渋谷にある三田の家へ行った連中が戻って来た。宏子は緊張した期待をもって徳山の部屋へ行って見た。寝台の上に四五人、デスクの前の椅子のところに徳山とはる子、杉などがいて、どの顔の上にも昼間とは違う憤慨と当惑の色が漂
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