にかわりはないばかりか、一家の柱として供出、税、どれひとつ男の戸主がいるときどおりにとり立てられ、増加して徴収されていないものはないのが現実です。
現在日本には一千万人の小学生がいます。憲法では、小中学校教育は親に負担とならないものとされていますが、実際には、労働者が一人の子供を小学校に出すのにさえ大体一ヵ月三、四百円はかかっていて、「夜の女」としてとらえられた一人の未亡人が、次の朝入学式に出る子供のためにどうしても金が入用だったからと泣いて訴えた実例があります。
農村の苦しい生活の中で「くち[#「くち」に傍点]を減らす」ために少年労働に売られていく女の子、男の子のすくなくないことは、周知のことです。そういう境遇で、学校へもやられず、労働基準法の取しまりの目をくぐって農業、家内工業その他に働かせられている子供たちは一〇五万人もいます。これらの子供たちの未来は明るいとはいえません。戦争で父を失くした子供たちが、おさない心に運命をあきらめて社会の下積みに沈んでいく小さい姿を思いやったとき、わたしたちの心に湧くのは何でしょう。もっと住みよい社会を! 人が人らしく生きられる社会を! という
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