感情の動き
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九二七年四月〕
−−

        喜び

 人に使われずに、自由に勝手な自分の好きなことをしていられるのは、嬉しいことには違いない。
 作家として、本当に自分自身の仕事が出来た時、心に感じたままを、一ばん心に訴えてくるものを、そっくりそのまま書けたら、それこそ最大の喜びであろう。

        怒り

 人間としてわたくしは、怒りもする、憤りもする。そしてその怒りや憤りの感じを、芸術の中に再現する。
 作家としてよりも先ず人間としてわたくしは――そういえば、画家だって俳優だって、怒る時には怒り、憤る時には憤るであろう。

        哀しみ

 作家としての哀しみというと、それは第二義的のことに過ぎない。人間としての感情では――それは「怒り」の場合の言葉を繰返すに過ぎない。

        楽しみ

 わたくしはいつも生きることを先にして来た。わたくしにはいつもプロフェッションがあとからついて来た。
 ――気がついた時、わたく
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング