カキッと折りまげるお金の顔を、お君はキョトンとして小供の様に見て居た。
 けれ共、どっか、そっ方を見て居たお金が、切った様な瞼《まぶた》を真正面お君の方に向けて、ホヤホヤとした髪をかぶった顔を見つめた時、何か、お腹《なか》の中に思って居る事まで、見て仕舞われそうな気持がして、夜着の袖の中で、そっかりと、何のたそくにもならない、色のあせた袖裏を掴《つか》んで居た。
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 いつんなったらよくなる事だろうねえ、ほんに、困りもんだ。
 そうやってお前に寝つかれて居ると、どれだけ私《わたし》は困るか、知れやしないんだよ。
 実際のかくさない処がねえ、
 薬代、お礼、養いになるものは食べざあなるまいし。
 そうじゃあないかい。
 お父っさんと、恭二の働きが、皆お前に吸われて仕舞う。
 病気で居るのに何もわざわざこんな事を聞かせたくはないけれ共、一つ家の中に居れば、そうお人をよくしてばかりも居られないからねえ、
 ほんとうに、どうかしなけりゃあ、ならないよ。
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 ホーと豆臭《まめくさ》い吐息がお君の顔を撫て通った。
 自分の夫の良吉にかくして小銭をためたり
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