分身分が下だと云う事も先方の心に余裕を与えた。
山岸では二三年前に、東京の法律学校を出た息子が万事を締って、その批判的な頭で生活法を今までとは善い方にも悪い方にも改めた。
山岸の御隠居はんと呼ばれて居る政吉は、二言目には、
[#ここから1字下げ]
「私はもう隠居なんやから、何も知らいてもらえんのえ、やや子と同じや云うてな。
息子の大けうなるもええが、すぐ隠居はんに祭りこまれて仕舞うさかい、前方から思うとったほど善い事ばかりではあらへんなあ、ハハハハ。
[#ここで字下げ終わり]
と戯談《じょうだん》にしてしまっては責任を逃れて居た。
隠居は、川窪がそう金の事などにがみがみしない家なのを幸にして、いずれ返さずばなるまい位に思って居るので、あまり張のない栄蔵のかけ合位ではさほど急《せ》いた気持にもならず、夜話しに息子と三十分ばかり相談する位の事で、これぞと云う方針などは立ててもなかった。
若主人が家に一切の事をする様になってあまりしらなかった内幕に立ち入って見ると、父親の名で小千の金が借りてある。
相手が悪いものではないので幾分安心はした様なものの、こんなものまで自分について居て
前へ
次へ
全88ページ中67ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング