のお父さんは袂糞位が関の山さ。
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と捨白辞をのこして、パッパと隣りへ行ってしまった。
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「あんまりどっせ、
何ぼ義母はんやかて我慢ならん事云いやはる、ほんに。
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お君は、真赤になって涙をいかにも口惜しそうにボロボロこぼした。
栄蔵は、だまって、墨色をした鉢と、火の様な花を見ながら深い思いに沈んだ。
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何故斯うやって、仲の悪い同志が不思議にはなれられない縁でむすばって居るのだろうか。
早く、どっちかが死ねば少しはよくなるだろうのにそうもならない。
自分からして生きたくないのに生きて居なければならないのも何故だろう。
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世の中が、平ったいものであったら、その突ぱなまで一束飛びに飛んで行って、そこから一思いに、奈落の底へ身でもなげたい様な気持になって居た。
恭二が良吉より先に帰って来ると、お君は何か涙声でボツボツと只気休めに、養母に頭を押えられて居る力弱い夫に訴えて居た。
気の置ける夕飯をすますとじきに疲れて居るからと云って栄蔵は床に入ってしまった。
お君は
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