幹について居る。
お君は、それを天竺から降った花ででもある様に、ためつすがめつながめて賞めた。
大きな声を出してお君が物を云って居るんで、お金は境の唐紙の所の柱によりかかって、親子の様子を見て居たが、二人が頭をつき合わせて一つ鉢の花を見て居て、自分は斯うやって一人で立って居るのかと思うと極く子供っぽいながら、烈しい、うらやみとねたみが湧いて来た。
ああやって、あんなしなびた様な花さえ賞めて居るお君が、同じ口で、どれほど自分の陰口をするのか分らないと思うと、半分は自分で意識しなずに、高い声で、
[#ここから1字下げ]
親子ほど有難いものはないねえ、
親のくれたものだと思うと、袂糞でもおがむだろう。
[#ここで字下げ終わり]
と云って口の辺をヒクヒクさせた。
「姑」と云う感じが胸一杯になって居た。
いつもなら、赤くなって、だまり返って居るお君が、力強い後楯がある様に、
[#ここから1字下げ]
「ほんにそうどっせ、
袂糞やて父はんのおくれやはったものやと思えば有難う思うでのみますわ。
[#ここで字下げ終わり]
と云い返した。
[#ここから1字下げ]
「そうだろうってさ、
お前
前へ
次へ
全88ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング