げ終わり]
とうす赤い顔をして返事をするのを見てお君は、そうやって、たのまれてくれるのも夫なればこそ、ああやって頼んでくれるのも親だからこそと、しみじみ嬉しい気持になって居た。
恭二と栄蔵とは、お君を中にはさんで、両側に、ねそべりながら、田舎の作物の事だの、養蚕の状況などについて話がはずんだ。
そう云う事に暗い恭二が、熱心に、
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「そうすると、どうなるんです?」
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などと、深く深く問うて来るのを、説明するのが栄蔵には快よかった。
折々、
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「な父はん、私も。
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などと、自分の病気についての事を云い出したい様にして居たけれ共、栄蔵は、種々な話に紛《まぎ》らして、一寸の間も、否《いや》な話からのがれて居たがった。
お君にあれこれ云わないでも、もう心の中はその心配で、一杯になって居る。
一升徳利に二升入らない通りに、栄蔵の心は、これ以上の心配を盛り切れない状態にあった。
お君を迎えに田舎に行った時に会った栄蔵と今の栄蔵とは、まるで別人の様に、恭二の眼にうつった。
急にすっかりふけてしまっ
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