ったるく、重く、のしかかって来る。
やがて、恭二などが帰って来る頃なので、髪をまとめるつもりで頭に手をやりはやっても、こらえきれないねむたさに、その手をどうにも斯《こ》うにもする事が出来なかった。
二時間ほどして、二人が戻った頃には、お君は、黄色い光の下で、たるんだ顔をなげ出して、いびきをかきながら夢も見ない眠りに陥ちて居た。
(二)[#「(二)」は縦中横]
何かにつけて頼りになるべきお君の実家《さと》は、却って自分が頼られるほど貧しい、哀れな生活をして居た。
元は村のかなり好い位置に居て、人からも相当に立てられて居た身も、不具者になっては、どうともする事が出来ない。
生きなければならないばかりに栄蔵(お君の実父)は、自分より幾代か前の見知らぬ人々の骨折の形見の田地を売り食いして居た。
働き盛りの年で居ながら、何もなし得ないで、やがては、見きりのついて居る田地をたよりに、はかない生をつづけて行かなければならないと云う事を思うと栄蔵の胸は堅《かた》くなって仕舞う。
家中のものからたよられて居る身であるのを思えば、自分の男だと云う名に対しても斯うしては居ら
前へ
次へ
全88ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング