映画の語る現実
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)支那街《チャイナタウン》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)文化性[#「文化性」に傍点]から生み出される
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 パァル・バックはアメリカ人であるが中国で成長して、中国の生活を小説にかく婦人作家である。彼女の作品をまだよまない人でもポール・ムニとルイゼ・ライナーが主演している「大地」は見物したであろうと思う。ひところ、あの映画もこの頃の情勢で公開されないかもしれないなどと言われていたが、ともかく観ることが出来てうれしかった。
 ずっと昔、リリアン・ギッシュが主演して大好評であった「ブロークン・ブラッサム」という映画があった。日本のタイトルは何という名であったろうか。それなどは、リリアン・ギッシュの持味として演技の落付き、重々しい美はあったがシナリオ全体としては従来の「支那街《チャイナタウン》」の概念から一歩も脱していなかった。東洋のグロテスクな美、猟奇心というものが主にされていたのである。
「大地」は、バックの原作がこれまでヨーロッパ人によってかかれた「支那物語」と
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