いたその娘とは、暖い十畳の日だまりで、神の微笑そうな涙を切に流した。
霜のない地面から長閑《のどか》な陽炎が立つ。
雀が植え込みの椿の葉を揺るささやかな音。程なく私は縁側に出、両脚をぶら下げて腰をかけた。膝には赤い木皿に丸い小さいビスケットが三十入っている。
柱に頭をもたせかけ、私はくたびれてうっとりとし、ぼんやり幸福で、そのビスケットを一つ一つ、前歯の間で丹念に二つにわって行った。
[#地付き]〔一九二四年三月〕
底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「女性改造」
1924(大正13)年3月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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