様に又、鈴木氏の様にあまり物事がきっぱりきっぱりがすきと云う人は、私のきらいな人である。
 あまりきっちりきっちりして居るところに驚くべき美がないと同時に、驚歎するだけの生活もないものである。
 宇宙の真、美が、すべて直線で定規で引いた様には出来て居ない。
         ――○――
 自分の専門以外の事について、あまり明らからしい批評的な又、断定的な言葉を放つものではない。
 大抵の時には、悪い結果のみを多く得るものである、それだから、何かの話ついでに、分りもしない人が戯曲の主人公の性格や経路を引き出したりすると、思わぬあて違いをするものだ。
 そう云う癖は一体に少し文学などをかじりかけた中年の男女が、自分より若い者共に何か云いきかせたりひやかしたりする時に出る。
 その人の品格を下げると同時に、
「なあんの事だ
 とその話全体をけ落して見させてしまう。
 気をつけるべき事である。



底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
   1986(昭和61)年3月20日初版発行
※1915(大正4)年8月5日執筆の習作です。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2008年2月28日作
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