らが好いか悪いかと云う事は別として、どうしてそう云う気分になって来るかと云うと、前者は、美に対する執着なり要求が少ないので、後者になると、絶えず美に対する渇仰が心に湧いて居るのである。
 美を要求すると云う事は、人性の自然だなどと云う学者めいた事をぬきにしても日常生活に必要なものであると思う。
 美を少しも愛さぬと同時に、それについて何の意見も持たない人は、世の中の非常に高尚な一面を、一生見ずに過す事になる。
 私の意見では、自分の部屋はあくまで自分の箇性の表われた美くしさで充分飾られて居なければならない。
 其故に私は、玩具を好み、すこやかな泥人形などに思をよせて居る。


 まるで、異った事の様であるが、人をいましめる時に叱るのと、恥かしめるとの差を明かに得《え》とくして居る人が少ないのに驚いた。
 まして、女に……。
         ――○――
 青年期に達する時に男でも女でも非常に頭がデリケートに芸術的になるものである。
 天才と呼ばれる様な人は、その時の美くしい発露を永遠につづけ得るのである。
 即ち、その時の若さが不朽なのである。
         ――○――
 小剣氏の
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