に見る男は上役や父兄や親類から目下に扱われる。同時に姑と嫁、嫂と義妹などの関係では女も同じ封建的な重苦しさを女の間にもっています。
 もう今日では、男女の間の古い差別は、男対女の問題ではなくなっています。日本の社会全体が、男と女、男同士、女同士苦しめあって互に抑えつけあっている封建的な感情から抜け出さなければならない時代です。社会の進歩ということは、ただ憲法がかわったり、民法がかわったりするだけでは実現しません。私たち働く男女が、自分たちの生涯について真面目に考え、選挙についても組合についても、一人ずつ責任をもって、進歩の方へ、民主的な方へと押しすすめるように生活を導いてゆかなければだめです。
 そう考えると、第一の問に、やっぱり重大な意味のひそめられていたことがわかります。私たちが幸福になるということ、婦人の地位が向上するということは、どれも具体的な問題です。職場の女性に設備のわるい職場は現実に幸福でないし、女なんか! という気分の職場が、婦人の社会的価値を認めていず、そこで働く若い女性が幸福でないのは自然です。
 (4)[#「(4)」は縦中横]の答で、現在の男性に女性の価値を理解してほしいと願う声は、そのままそっくり、働くものとして生きることでは男も女も同じ立場なのだからと発展させられるべきです。男が女に対し高びしゃな態度をとっている社会では、その男も、自分を上から高びしゃにやっつける者をもっている社会なのです。若い女も男も、お互のその心持で団結して、明るい職場、明るい社会を作ってゆかなければ、あんまりつまらないと思います。
 (5)[#「(5)」は縦中横]の男女交際ということも、男と女とが、ほんとうにそういう人間らしい心にたってつき合ってゆけば、皆さんが声を揃えて批判しておられるようなじだらく[#「じだらく」に白丸傍点]で範囲をこしたつき合いは生れなくなるでしょう。若さという魔法つかいは、どんな真面目な話題も、簡素なたのしみもそこに青春の男女があれば、魅力的なものにします。下らないエロ雑誌に刺戟されて、働く若い人たちが人間としてならずもの[#「ならずもの」に白丸傍点]のような無責任な男女関係に入ることはあんまり青春の価値を知らなすぎます。いまのデカダンスな空気は若い人の一部に、けじめのない男女関係があたりまえという気分をつくり出しています。けれども私たちは人間
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