の男と女であって、他のけだもの[#「けだもの」に白丸傍点]ではありません。性的にだけ生きているのではなく、性をもつ人間として生きているのです。だから、人間同士の性的な魅力というものは、直接な性の表現ばかりにあるのではありません。どんな真面目な話をしても女は女の声でしか話しません。男女の調和は自然であるだけに、あせってそのたのしさを誇張したら恋愛にも友情にも、真実はうすれます。男と女とは遊ぶだけの仲間ではなく、ともに生きてゆく一生の仲間であり、しっかりと生きてゆく男女の人間としての生活の上に、よろこびも、耐えてゆくべき苦しさや悲しさもあるわけです。そして、愛するということは、一緒にうれしがるばかりではなく、一緒に悲しむことのできる心であり一緒にその悲しさからぬけ出す努力のできる心をいうのだと思います。
 男が女性をリードするばかりでなく、女性も男性を導きます。たよりになるのはお互です。お互にたよりになれる人間の仲間としての男女働くものの誇を心にしっかりともって、社会の進歩を導くものとしての自覚をもって生きてこそ、青春に悔いのない日々が迎えられると思います。
 組合の機関紙で、こんな人間らしい話もできるのだから、何といっても組合は働くもののとりで[#「とりで」に白丸傍点]です。御用組合にしてはたまりません。組合のつよくなることは特に婦人にとって幸福なのですから。
[#地付き]〔一九四八年四月〕



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「福鉄労報」第41号、国労福知山地方本部
   1948(昭和23)年4月1日発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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