するはずです。ただ若い娘というだけでは持てないゆたかさと実力があるはずです。結婚して、母になったとき、やはりその経験は子供にとって誇らしいものにもなるでしょう。
(2)[#「(2)」は縦中横] ほとんどみんな読書が趣味の一つです。本がたかくて何と不便でしょう。組合の文化部に文庫がありますか? 回覧雑誌のグループをこしらえておいでですか? もしまだでしたらおつくりになることです。どんな本をおよみですか? 文芸ものが第一でしょう。けれども、みなさんが女性の幸福を求めていらっしゃるし特に(4)[#「(4)」は縦中横](5)[#「(5)」は縦中横]の問題では切実な意見をおもちですから、日本の女性が社会の間でどんな生きかたをして来たかということをもう一度考えさせるような婦人問題の本を読むことも意味があると思います。
福鉄に働く女子職員ばかりでなく、すべての職場で、女性は、日本の男にまだつよくのこっている男尊女卑の気風に苦しんでいます。(4)[#「(4)」は縦中横]への答として、すべての若い女性は、男がもっと女性を理解してくれるようにという訴えを示しています。
日本で、労働組合のなかにさえも、まだ昔の男女差別の習慣がのこっているのは、日本の社会全体が、ついこの間までそんなにひどい封建的なしきたりにとじこめられていたからです。それは、みなさんの御家庭の実際をみてもわかります。めいめいの家の中で、お父さん兄さんたちはなかなか力のある支配者のようです。主婦たるお母さんは決して妻としてお父さんと同等ではありません。そして若い娘は、女の子は、と言われて男の子と差別されます。教育そのものが女学校と中学校で程度がちがい、どうせ[#「どうせ」に傍点]お嫁にゆくのだからと、女の子の勉強は男の子ほど重大に考えられません。男の子はせめて中学か専門へやっても、女の子は高等までで結構とされがちです。男の子と女の子とそんな差別をつけながら、社会へ出て働くときはどうでしょう。男の社会でも官業のなかなどにはなかなか身分や上役下役のけじめがひどいものです。若いものより古手の人に権力があって、若いものがいい意見をもっていても、それはすらりと通らない場合も少くありません。組合の活動そのものを、腹の中で生意気と思う人もいるでしょう。まるで、いたち[#「いたち」に白丸傍点]ごっこです。男は女を目下に見る。女を目下
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