。いろんな大きな事は男の方が幸福な事でしょうけど、一日中の暮し方でさえ出来るだけ美しいものにしたいと思ってる私みたいなものは、たった一度でもあのみっともない時代をすごす事は考えるだけでも辛い事ですもの。私の手の形なんかは、いかにも女らしいふくらみをもって育って行って呉れます。そして私の声のおないどしの男の子よりも倍も倍も柔いということも知ってます。
 縮緬のシットリした肌ざわり、しっとりとした着物の振りをそろえる時の心地、うすいしなやかな着物のあまったれる様にからまる感じ、なりふりにあんまりかまわない私でさえこれは世の中の皆の男の人に一度はさせてあげたいと思うほどですもの――自分の心の輝きをそっくり色と模様に出した着物を着られますもの、その下には胸毛なんかの一寸もない胸としまったうでとをもってますもの。
 そして又私は何のことにでもこまっかくオパアルの様にいろいろに輝いて見て呉れる心をもってますもの。そいで男にまけないだけの事を出来ると思ってますもの。
 私はこんな事を思って肌のなめらかな女だって云う事を喜ぶ様になりました。
 何にも、今までにない事を見つけ出して自分の女だって云う事を
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