るけれ共……。それからバックに縫をするから下絵を書いて呉れなんかと云って居たっけがどんなのがいいんかしら、それはマア、ものが来てからのはなしと……、この次までに綿人形とくくり猿を作って来て呉れる約束がしてある――
こんなにデコデコに□[#「□」に「(一字不明)」の注記]って来てヤレヤレよくマア、斯う考えられたもんだと自分でびっくりするほどだが、あの人はあんなに飾りっけのない気取らない調子で話をしたり考えたりして居るが――一体私をどう思ってるのかしらん。そうと空気ん中にとけ込んでさぐって見たい――
すき見をされた様な気がしてせわしくあたりを見まわした。そして一寸自分のかかとを小指でひっかいた。そして又続きを考え始める。
デモマア、彼の人が一番私の気持を知っても居、又私の考えに似た事を考えてる様だけれ共、私がよっぽど年上で居ながら心のそこをのぞかれて居る様な気がする事があるが――キットあの上眼で見つめるのが私の心に妙に感じるのかも知れない。キットでもマア、えたいの分らない妙な娘さ、何、たかが女だもの、そんなにビクビクする事はありゃあしないさ、こんな事をのべつまくなしに考えた。
いつ
前へ
次へ
全85ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング