んかってうたいながら、二階の私の居る部屋にいつでも降りて来る女が居るんですよ、二十位でネ、いい様子じゃあないけれ共、自分をいい様子に見たがって一寸椅子に腰かけるにもまっすぐにはかけない人なんです。考えはなくっても口ではいろんな事をしゃべりますよ」
「ヘエ、それでも一つ位いいとこはありましょう、女ですもの……」
「まつげが思いきって長いんです、目つきは悪いけど……」
「私はまつげの長い人が大すきなんです、だからだからその人もすきんなるかも知れませんワ、会って見たら……男の人でもまつげの長い人はすきですもの……」
「エエそうですよ、まつげの長い人は下目をした時にきれいなもんです……」
「この頃、貴方の書きたいと思う様な人がありまして?」
「ありましたとも、大ありだったんですけど……ほんとうに思い出しても腹が立っちゃあうんですよ」
「逃げられたんでしょう」
「にげ様にもよるじゃあありませんか、マア、斯うなんですよ、私がネ、こないだ新橋に行った時、ステーションにですよ、その時あの玄関に二人女が立ってたんです。十七八の年頃で、同じ位の年でネ、どっちもきれいなんです。一人は、洗髪にうっすり御化粧を
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