やすい大きな兎と蛙とお獅子のをふくろに入れてもらいました。
それを二本の指でつまんで小供げな様子であの仲店の敷石の上を羽二重の裾を気軽らしくさばいて二人にかるい調子で話をしながら歩いてかなり混んだ電車にのりました。一番はじっこにむずかしい顔をして額を押えて居た四十位の商人は私の大きくくった袂をぎごっちなくひっぱって自分のわきのすき間に腰をかけさせてくれました。私はその男のかおを一寸見てすぐ、
「私を私の年以上の女だと思って居る」
こんな事を知って悪がすこい笑いを心の中にうかべました。そうしてそのせまっこいところに座って窮屈な思いをしながらもまだすましたとりつくろった顔をして白いうすい紙を通してとんだりはねたりの色や形を思って居ました。
二つほど停留場を行った時に一人間の悪そうなかおをしてのった十九許りの制服を着て居ながら学生らしくない書生が私の前に一つあいて居たつり革にぶらさがりました。私は今まで少しゆるんだ心を又キューとはって、前よりも一層つくろった憎らしいほどすました様子をしました。
その男は油ぎった何とも云われないいや味な様子をして軽いカーブを廻る時、一寸止った時、そんな
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