好奇心やその映写されるものをうれしがる心等がごっちごっちになって訳のわからない気持になって居たんでしたのに、アア、私はもう一足も進みたくないほど不愉快な気持になってしまいました。
 入り口のすぐせっこい段々になって居るって云う事も案内女のいかにも浅草式な赤いかなきんの妙てこなものを着て白粉をコテコテぬって歩くのにみにくい私がはずかしくなる様な曲線をつくって居るのなんかは私の心を涙をこぼさせそうにしてしまいました。
 そいでも私達は目をつぶる様にして入りました。内はアノ玉乗なんかの様なきたならしい座布団をしいて座るところでした。三人はせまいところにキチンと座って、半ばから来てよくつづきの分らないフィルムの動き方を見ました。私の囲りはみんな若いやすっぽいかおっつきの男達ばっかりでした。
 いきなり座った私を間違った事をしたあとの様な妙なかおをして見て居ました。
 その中を私は女王の様なツンとした態度と気持をもって正面をジッと見たっきり囲りのものを私の下におしつけた様な、このフィルムを私一人のために動かさせて居ると云う様な気持になって居ました。
 いろいろ道々して居た希望なんかは九分通りまで
前へ 次へ
全85ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング