轣A甲高く、はっきり、
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みさ子の声 いやよ!
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奥平、英一、思わずぎょっとするところへ、みさ子、足早に出て来る。二人を見、
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みさ子 まあ、貴方もいらしったの?(嬉しそうに、奥平の方によって行く。)
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直ぐ後から、谷、両手をポケットに入れ、眉を顰めて来る。
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英一 (意を迎えるように)どうだね。いい花があったかい?
谷 (英一を見、奥平を見、鋭く)花なんかないよ。昔話だ!(さっさと一人で通り過ぎようとする)
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英一、不決断について行こうとする。その時、ただならない奥平の声が、彼を振返らせる。
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奥平 (近づくみさ子を避けるように、二三歩動きながら)――私に構わず置いてくれ!
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みさ子、驚き、良人、英一、谷と、順に顔を見る。英一、頭を動してその視線を避け、見向きもせずに彼方に行く谷の後から、救いを得《もと》めるように、蹤《つ》いて行ってしまう。みさ子、再び、良人を眺める。
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みさ
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