オたもんですね。(笑う)然しね、これは、青二才の僕が云うのじゃあなくて、ちゃんとした大学者も云うことですがね、異性間の感情というものは、決してそれほど簡単明瞭に片の付かないものなのです。だから御覧なさい、あなたの方こそ、そう、はっきりしているけれども、それが果して奥平さんの胸にどれだけ響いているか、疑問でしょう?
みさ子 ――それは解らないわね。安心しているのか、もうどうせ他に向きようもないときめて、放って置くのか、……。
英一 (突然、口を挾む)こういう問題は、議論すべきものじゃあないと、僕は思うね。時間が自ら証明する。まして、みさ子さんなんか、失礼だけれども、結婚してから、半年ほかほど経たないんだもの。傍から攪乱するようなことは……。
谷 ――攪乱は穏やかでないね。――君は、みさ子さんが、僕の一寸云うこと位で支配される人だと思うのか?
英一 (曖昧に)そうじゃあなかろうさ。然し――
谷 それに、夫妻というものだって、どれほど、鶴と亀とでお伽噺にしようとしたって、結局生きている人間の、男性と女性との生活だろう?
英一 そんなことは定っている!
谷 それなら、一般論として、男性女
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