河上氏に答える
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四九年三月〕
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河上氏の私に対する反ばくは一種独特な説諭調でなかなか高びしゃである、が、論点が混乱していて、多くの点が主観的すぎる。河上氏は私が「読者の声を拒絶し、封じ」「一切の批判をさしひかえ」させようとするかのように書いているが、全く事実に反する。この三年間、私は自分の仕事への数多くの批評に対して沈黙を守りすぎてきた。
文学作品は作品そのものの力で人の心に生きるものであり、歴史が価値を証明する。長篇を書く途中での論争を欲しなかった私について、あらゆるいいたいことが自由にいわれている。現に河上氏がやっているとおりに。しかし私はこのごろだまりすぎていることの害を知った。特に党機関紙にどういう形式と方法をとおしてにしろ本質をゆがめて特徴づけようとする批難があらわれたとき、沈黙しているのは自他への無責任であることを確認した。
さてこの投書は、前のとは少しちがってきて、一方では私の作品の真実が多数の人の心に生きる事実を認めはじめた
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